その2のライオン。
ドロシー曰く”おとぎ話の世界”の住人。
魔法使い種族。慎重派で消極的で怖がり。
勇気が足りないのが目下の悩み。

(2003年頃)











**************************

・・・うー・・・”自分を変えてくれる魔法薬が作れる勇気の魔法書”・・・・・・ねぇ。

魔法学院の中の一室。魔法書・資料検索室。
世界中で発行された魔法書や魔法雑誌、果ては新聞記事まで検索出来る便利な部屋。
ついでに検索して出てきたモノは自分の魔力が続く限り具現化して実際に読むコトも出来ちゃう。
で特に目的もなくパラパラとページを読み飛ばしていた僕の目に飛び込んだ魔法雑誌の記事。
”自分に自信がない人もこれで一発逆転★前向きで素敵なアナタに大変身!!”


・・・うっわぁ・・・うっさんくさぁ・・・;

と思いつつもついつい読み進めてしまう僕・・・あぁ意思の弱さに乾杯・・・。

どうやらこの雑誌は自分が作った魔法薬や魔法書を個人売買する雑誌のようで。
こんなのを作ったので買って下さーいとか、こんなのあったら譲って下さーいとか。
あとは宣伝・・・ていうか告知もあったりね。
さっきのはその中で見つけた小さな記事。
一時的に性格を改変する薬っていうのなら学校で習う位一般的なんだけど・・・
あ、興奮剤とか安定剤とかそういう類のモノね。
でもココに書かれてるのはそんなのじゃないらしくて。
・・・根本から変わるんだって。本人が存在する限りずっと続くんだって・・・。

こんな胡散臭い記事僕は信じない。これ以上の興味も湧かない。

・・・ハズだった。
記事の最後に書かれた項目を見るまでは。

「・・・?何コレ?」
そこに印刷されていたのは1つの不思議な図形。
・・・文字・・・なのかな・・・?古代文字とかそういうモノなのかもしれないけど
そのコースの授業を取っていない僕にはよく判らない。
『これがヒントです。これがある場所は世界でたった1箇所だけ。
どこかにあるその場所を探し出し、
来て頂ければ勇気の魔法書を差し上げます。(限定1名様)』

・・・・・・。
探すとなると・・・冒険・・・とか旅・・・ってコトになるんだろうなぁ・・・。
・・・・・・。無理無理。僕にそんな怖いコト出来るワケないよ。
・・・。てゆーかそんな薬別に信じてないし・・・。
・・・そりゃホントにあるなら欲しいケド・・・。


家への帰り道。
とぼとぼ歩きながらふっと思い出す。
ずーっと昔に拾った1冊の童話。
僕みたいに色んなコト怖がってた1匹のライオンが勇気を手に入れる為に冒険するお話。
違うトコから来た女の子と、あと他にも仲間がいて旅をするんだよね。確か。
あんまり覚えてないケド好きだったなぁ・・・あの本。いつの間にかどっか行っちゃったんだけどね。


「・・・僕にも誰か仲間がいたら良いのに・・・そしたら・・・」
そしたら少し位は・・・。
少し位はこんな僕から抜け出せるかもしれないのに・・・。
駄目な僕とちょっぴりさよならして旅に出れたかもしれないのに・・・。

依存心だらけの小さな呟きはその日そのまま現実になった。
家に帰り着いた僕の前に突然キミが現れたから。





旅は怖いコトもいっぱいだから後悔してないって言ったら大ウソになるけど・・・
やっぱり何となく感謝もしてる。ドロシー・・・来てくれて有難う。



そういえばー昔読んだあの童話に出てくる女の子の名前・・・
キミと同じ名前だった気がするんだよね・・・何か不思議ー。